池袋スカイクリニック » EDとは2
ED(イーディー)とは、勃起機能に何らかの障害があることを指します。
日本性機能学会は、
”Erectile Dysfunction”(勃起不全)の頭文字から”ED(イーディー)”
と呼ぶことを提唱しています。
かつては、インポテンスやインポテンツと呼ばれていたこともありました。やや侮辱的な表現であるため、現在では、EDと表現するのが適切とされ、単に『イーディー』と呼ばれることが多くなっています。
池袋スカイクリニックが開院した2009年当時は、まだまだ、”ED(イーディー)”と言うワードが浸透していない時期でもありました。かつては、”勃起不全”や”勃起障害”と呼ばれておりました。この場合は、どちらかと言うと、より重症度の高い”勃起の異常”をイメージされる懸念がありました。より、些細な”勃起の悩み”も、相談して欲しいという意味合いもあり、イメージ払拭するために、”ED(イーディー)”が提唱されておりました。
最近では、勃起不全よりED(イーディー)の方が一般化している印象さえあります。
満足できるか否かが重要です。満足に関しては、各々感じ方は異なります。現状に満足できていなければ、治療していただき、満足感に違いが生じるか確認して頂くのも良いかと思います。
全世界的には、40歳以降の男性のおよそ50%がEDであったとする報告もあり、様々な理由から、重要な健康問題として捉えられています。
EDは、ご本人とパートナーの生活の質と満足度に悪影響を及ぼす以外にも、余命を短くするなど、様々な影響があることがわかってきています。
EDは、ご本人とパートナーの生活の質と満足度に悪影響を及ぼす以外にも、余命を短くするなど、様々な影響があることがわかってきています。
個人によって勃起に関する悩みの程度は異なります。下記のように様々な程度の勃起の悩みを含むといった意味でも、ED(イーディー)と呼ばれるようになっています。
EDは正常な加齢変化の一部であると思い込んでいたり、EDを医学的疾患として認識していない、性について医師に相談するのが恥ずかしい、パートナー不在に因るによる性的不活動、などを理由として、積極的に治療を受けていない、受けようとしていない場合があります。
さらに、EDであることに対する偏見や恥ずかしさによって、問題を否定してしまう可能性もあります。
かかりつけ医が、他の疾患を治療しながらも、EDに関しては、疎かにしてしまっていることも理由の一つかもしれません。
written by 池袋スカイクリニック
EDは男性のQuality of Life(QOL生活の質)を低下することが知られています。これは性生活に限りません。
EDで悩む男性は、抑うつ傾向にある事が知られ、このことが日常生活に影響を与えています。逆に、EDを治療する事で、抑うつが改善し、日常生活により前向きに、より充実したものに変える事も可能です。実際に、ED治療を受けた男性では、自信と自尊心を回復し、体力と精神状態をより良い方向に改善したとする報告があります。仕事に積極性が生まれたり、対人関係も良好なものに変化する可能性があります。
つまり、ED治療は、単純に男性機能を改善するだけで無く、その効果は、日常生活及び生活の質を改善します。
初診時に、落ち込んだ表情をしていた患者様が、笑顔で再診していただいた時など、ED診療に従事している者として、大変嬉しく感じる事もしばしばです。
参照:
Effect of sildenafil on erectile dysfunction and improvement in the quality of sexual life in China: a multi-center study
Int J Clin Exp Med. 2015; 8(7): 11539–11543.
男性のEDは、パートナーである女性の性生活にも影響を与えます。女性の性的満足度およびオーガズムの頻度の低下は、男性パートナーのEDの重症度と関連があるとされます。さらに、女性が性行為を避けることや、女性の性欲の低下に繋がることが指摘されています。
EDを自覚している男性は、性的なパフォーマンスの低下に対して抑うつ症状や不安感を生じ、性行為を避ける傾向にあります。このことが、女性にも影響を与え、女性の性機能の低下を来す可能性があります。バイアグラ等でED治療しているパートナーを持つ女性は、治療を受けていないパートナーを持つ女性と比較し、性欲が高く、性行為中に、より興奮やオーガスムを経験したとする研究報告もあります。
パートナーの満足度が、女性の性機能を改善し、男性の性的満足度にも繋がり、好循環が生まれます。
以前より、心血管疾患を持つ方、あるいはその危険因子を持つ方、糖尿病などの生活習慣病を持つ方は、EDが存在するか可能性が高いことが知られています。逆に、EDを認める場合は、これらの疾患や危険因子が存在することを疑う必要があります。
最近では、それだけでなく、『パートナーに対する性的関心の低下』、それ自体が、心血管疾患の独立した危険因子であったとする報告されています。ED治療は、セックスを性的に喜び多いものとするだけではなく、健康状態や余命を改善させるための治療にもなります。
このことは、パートナーにも当てはまります。男性が性的に関心を持ち、パートナーとセックスすることは、パートーナーの健康状態と余命の改善に繋がります。
参照:
Male sexuality and cardiovascular risk. A cohort study in patients with erectile dysfunction
J Sex Med. 2010 May;7(5):1918-27.
池袋スカイクリニック
日本性機能学会が、25年ぶりに実施した、オンライン上で行われたEDの疫学調査を2025年に報告しました。
Erection Hardness Score(EHS)を用いた結果(grade2以下)では、30.9%がEDであると推測されています。これは人口で言うと1400万人と言うことになります。
2001年に報告された日本のED有病率は、1,130万人(中等度〜高度ED)とされていましたので、増加傾向と考えられます。
EDの有病率の増加は、世界的な潮流とも言えます。
2025年報告のED疫学調査では、20〜24歳代の層も対象となっています。
2001年に報告された本邦のED疫学調査です。ただ、この調査では、25歳未満の男性が含まれていませんでした。これは、以前は、EDは、年齢とともに増加する疾患であり、若年者がEDに罹病することは、あまり考慮されていなかったことにあります。
今回のED疫学報告では、20歳代のED有病率は20%を優に超えるとする、驚くべき結果が報告されています。
この疫学調査では、IIEF-15とErection Hardness Score(EHS)、Sexual Health Inventory for Men が用いられています。
オンライン調査には、メリット、デメリットがあるので、その結果は、オンライン調査であることを踏まえて、解釈する必要があります。
単純に、
”個人的に勃起に悩んだことはありますか?”
と言う質問に対し、13.0%の参加者が”はい”と答えています。人口で考えると、およそ600万人になります。これは、予想されていたよりも、はるかに少ない有病率となります。
しかし、ED問診ツールであるSexual Health Inventory for Men を用いたところ、重度ED52.8%、中等度12.9%という、驚くべき結果が報告されています。さらに、全てのEDの兆候がある例を含めると、81.0%の男性がED、またはEDが疑われるという、衝撃的な結果となっています。これは、人口にすると、3650万人上と言うことになります。
つまり、この解釈には注意が必要です。SHIMという問診票は、性行為を行っていない場合、点数が低く算出されます。つまり、この”乖離”は、日本人は、性行為の回数が少ないため、勃起に悩む機会が少ない、とも受け取れます。
日本性機能学会は、
『性交渉の頻度が1カ月に1回未満』
の場合を、セックスレスと定義しています。
このセックスレスの定義を当てはまると、70.4%がセックスレスと言うことになります。
年齢とともにセックスレスの割合は増加していますが、例外として、20〜24歳代のセックスレスの割合は、その次の、25〜29歳の代のグループと比較し、高くなっています。
それ以降の年齢のグループでは、年齢とともにセックスレスが増加しており、いわゆる”Jカーブ現象”を呈しています。
EHSを2以下とそれ以上のグループで分けた場合、EHS2以下のグループでは、メンタルヘルス以外の併存疾患が多くなっています。
この研究報告では、EDのリスクファクターとして、糖尿病や高血圧、脂質異常症、肥満などの代謝疾患、心血管疾患や慢性腎臓病、神経疾患、骨盤の外傷や手術、LUTS、喫煙歴、睡眠時無呼吸症候群などが挙げられています。
これらは、様々な研究報告で報告されている内容と同様です。
他のED疫学研究との違いは、不安や抑うつなどの精神疾患に関しては、併存率が7%であり、リスクファクターではなかったとする点です。
しかし、オンライン研究という性格上、不安や抑うつがある例が、そもそも、研究への参加を拒んでいた可能性があります。
データの収集法などの違いによって、優位差が出なかっただけではないかと考察されています。
夜間勃起現象に注目すると、30歳代、40歳代に比較し20歳代が少なく
実際に、不安と抑うつは、ED例の24.3%と23.3%に合併しているとするイギリスからの報告もあります。
参照:
Prevalence, comorbidities, and risk factors of erectile dysfunction: results from a prospective real-world study in the United Kingdom
Int J Clin Pract.2022 Mar 20:2022:5229702.
本邦では、出生数の低下が国家的課題であり、それに対しての研究報告があり、そこからも、EDの有病率が読み取れます。
男性不妊患者を対象とした報告が、1996年と2015年にあります。
これによると、2015年の報告では、EDが男性不妊の原因としているケースは13.5%とし、1996年の研究調査と比較し、およそ4倍に増加しているとしています。
このことは、生殖を希望している比較的若年者のED例の増加を表しているとも言えます。
参照:
Nationwide survey of urological specialists regarding male infertility: results from a 2015 questionnaire in Japan
Reprod Med Biol. 2017 Oct 4;17(1):44–51.
Erection Hardness Score(EHS)によると、20〜24歳のEDの有病率に限れば26.6%です。25〜29歳のグループではやや低率で、30〜34歳のグループのED有病率が最も低くなります。そこから、年齢とともに増加する、”Jカーブ現象”を示しています。
ちなみに、20〜24歳のグループのED有病率は、50〜54歳のグループが示す27.8%と同程度の有病率になります。
最近では、世界的にも、若年者のEDの増加が顕著と言われています。2000年ころの報告では、40歳未満の男性のED有病率は、2〜5%程度とされていました。しかし、最近の報告では、20〜30%に急速に増加しているとの報告もあります。若年者のED例が、激増しています。
参照:
Erectile Dysfunction in Young Men—A Review of the Prevalence and Risk Factors
Sexual Medicine Reviews, Volume 5, Issue 4, October 2017, Pages 508–520
20〜24歳のグループでは、『性欲を感じない』〜『稀に性欲を感じる』と答えた割合が30%を超えています。
また、この割合は、25〜29歳のグループが最も低く、以降は、年齢とともに、割合が増加する、いわゆる、”Jカーブ現象”をきたしています。
IIEFスコアは、『勃起機能ED』、『オーガズム』、『性欲』、『性行為の満足度』、全てを含めた満足度の5つのドメインに分けて評価されます。(点数が高いほど正常に近い、満足度が高い)
20〜24歳のグループでは、25〜29歳のグループと比較し、IIEFトータルスコアおよび全てのドメインにおいて、低い値となっています。25〜29歳のグループにおいて、全てのIIEFドメインが最も高く、以後、年齢とともに低下する、やはり、”Jカーブ現象”を呈しています。
この傾向は、年齢とともに改善するのか、それとも、年齢とともに、今以上に性機能が減退していくのでしょうか?今後、どのような推移を示すのか、注視しないといけません。
20〜24歳の男性の60%以上はセックスレスであると報告されています。
また、
『全くsexしていない』
の返答例に限ると、20〜24歳のグループ内で40%以上を占め、割合として最も大きくなっています。
年齢とともに、『全くsexしていない』の割合は減少して行きます。
マスターベーションの頻度については、20〜24歳代が少ないわけではなく、性的興味がないと言うことでは無い様子です。
もしかしたら、インターネット環境の充実が、原因である可能性が指摘されています。
別項にも記載いたしましたが、マスターベーションの回数は保たれているため、性的興味が失われたわけではありません。
Z世代はデジタルネイティブと呼ばれ、インターネットを扱うことに長けた世代です。インターネット上には、世界中のポルノが溢れています。
さらに、コロナ禍による巣篭もり需要で、インターネット上のポルノが、より一般的になった世代とも言えます。
ポルノの閲覧が、男性の性機能に影響を与えているとする指摘があります。
参照:
Erectile Function and Sexual Activity Are Declining in the Younger Generation: Results from a National Survey in Japan
World J Mens Health 2025 Jan 43(1): 239-248
池袋スカイクリニック
国際性医学会や世界保健機構WHOが監修するICD-11では、男性の勃起機能障害をErectile Dysfunctionとな表現し、これを”ED”としています。日本語訳にすると、勃起不全となります。
これに対して、アメリカ精神医学会が監修するDSM-5では、Erectile Disorderとし、これを”ED”としています。あえて、日本語訳すると『勃起の異常』となり、よりライトな印象となります。
日本性機能学会は、国際性医学会の流れを汲んでいるため、前者のErectile Dysfunctionから”ED”とし、勃起不全の略としています。
『Dysfunction』と『Disorder』で比較すると、Dysfunctionの方が重症度が高い印象があります。いずれにせよ、様々な程度の勃起の異常を全て包括したのがED(イーディー)ということになります。
国際性医学会によって、2015年に開催された、第 4 回国際性医学コンサルテーション会議(4th International Consultationon Sexual Medicine: ICSM)では、
Consistent or recurrent inability to attain and/or maintain penile erection sufficient for sexual satisfaction.
と定義されています。
『一貫して、または再発性に、性的な満足感を得られるほどの勃起が得られない、または維持することができない』
と訳したほうが良いかもしれません。
『性行為』ではなく『性的な満足感』に重きが置かれています。
最後の、 for sexual satisfaction のところが、度々、
for sexual performance(性機能) → for sexual activity(性行為) → for sexual satisfaction(性的な満足感)
のように、改定され、現在に至っています。
勃起機能(性機能)は保たれ、性行為のできる勃起の硬さが得られていても(性行為は可能)、性的な満足感が得られていなければEDである、というように変わってきています。
具体的には、セックスは可能だが、ご本人もパートナーも、満足できていなければEDということになります。
日本性機能学会が監修したED診療ガイドライン第3版では、EDとは、
『満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または(and/or)維持できない状態が持続または(or)再発すること』
と定義されています。
これは、上述の第 4 回コンサルテーション会議(4th International Consultationon Sexual Medicine: ICSM)が元になっております。
池袋スカイクリニック
世界保健機関WHOが提唱している国際疾病分類第11版ICD-11(2023年)では、EDは、『性行為を行うにあたって、十分な持続と勃起硬度を得ることができない、または、維持する能力に欠けている、または、著しく減少している状態』としています。
さらに、『この状態は、性的欲求や十分な性的刺激に反して生じ、断続的に、または持続的に、数ヶ月は継続しており、このことにより、重大なストレスを感じている』状態としています。
下記のように、大きく5つに分類されております。
さらに、『生来のED』、『後天的ED』は、以下の様に、その要因が細分化されています。
生来のEDと聞くと、遺伝的に決定づけられ、改善が難しく感じられるかもしれません。しかし、実際には遺伝的に決まっているEDは、頻度としては少ないとされています。
初めての性活動からEDを自覚し、マスターベーション含む全ての状況下で、期待された勃起が得られない、または、減弱している。
初めての性活動からEDを自覚し、ある特定の状況下、特定のパートナー、特定の刺激では、期待された勃起が得られない、または、減弱しているが、その他の場合は、問題がない。
EDではなかった期間の後に発症し、マスターベーション含む全ての状況下で、期待された勃起が得られない、または、減弱している。
EDではなかった期間の後に発症し、ある特定の状況下、特定のパートナー、特定の刺激では、期待された勃起が得られない、または、減弱しているが、その他の場合は、問題がない。
※一部改変しています。
池袋スカイクリニック
『なぜ、精神医学会?』と思われる方もいらっしゃると思います。それだけ、EDはメンタルな要素が影響しているとお考え下さい。ED以外にも、様々な性機能障害が、心因を原因とし発症します。
アメリカ精神医学会が監修している、精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)、略してDSMにおいても、EDの定義と診断基準が提唱されています。
その第5版であるDSM-5では、EDはErectile Disorderとし、基準となる症状を3つ挙げています。
上記の3つの症状のうち少なくとも1つが、性行為において、ほぼ常に、あるいは常に(75〜100%)、経験されるとしています。
また、これらの症状が、
ことを全て満たすことが必要とされています。
さらにEDは、『発症時期』と『発症状況』のように細分化されます。
基本的には世界保健機構WHOのICD-11における分類と同様の考え方になります。
『軽症』『中等症』『重症』と分類されますが、各程度を証明する証拠がある場合とされておりますが、やや抽象的な表現になっています。
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EDは主に、『器質性ED』、『心因性ED』、『混合性ED』に分けられます。さらに、この分類に、最近増加傾向の『薬剤性ED』を加えると、より理解しやすいと思います。
多くの場合は、これらが混合している(混合性ED)ことが多いため、器質性を主因とするもの、心因性を主因とするもの、などと関与の程度で分類します。
器質性EDとは、簡単に言うと、年齢や病気の一症状としてEDが生じている場合を指します。例を挙げると、糖尿病や高血圧などの生活習慣病による動脈硬化、パーキンソン病や多発性硬化症などの神経疾患、前立腺摘出術などの骨盤内腔の手術歴などです。
心因性EDは、メンタルな問題で生じたEDになります。不安やうつ、緊張やプレッシャー、過去の性行為のトラウマ、宗教的理由などです。社会的ストレスや挙児希望のプレッシャーなども、ここに入ります。
薬剤性EDは、持病の治療薬の影響で生じたEDです。抗不安薬、抗うつ薬、統合失調症治療薬などの抗精神病薬、抗てんかん薬などが代表的ですが、その他にも、フィナステリドやデュタステリドなどの男性型脱毛症治療薬(AGA)、一部の降圧薬(高血圧の治療薬)や胃潰瘍治療薬など、様々な薬剤がEDの原因になり得ます。
大きな原因が一つだけ存在するより、これらの要素が混在し、EDを発症するケースが多いです。
詳しくは、各項を用意しておりますので、ご参考下さい。
池袋スカイクリニック
EDの原因と共通するところも多いのですが、下記の危険因子(リスクファクター)を有する方は、将来のED発症が効率であると考えてください。
EDの発症予防は、生活習慣の改善が大切です。
ご参考にして下さい。
年齢によりEDが増加し、その重症度も上昇することは、直感的にもご理解いただけると思います。実際に、様々な疫学研究調査においても、加齢が第一の危険因子(リスクファクター)であることが示されています。アジア人は、加齢による影響が、他人種と比較し、より顕著であったとする報告もあります。
様々な研究報告で、喫煙とEDの関係が明らかになっています。喫煙量と期間とEDの頻度、重症度は相関しているとされています。禁煙がEDの改善に繋がるとする報告もあります。
少量の飲酒は、ストレスや不安の解消につながる可能性がありますが、習慣的な過度の飲酒は、精巣の萎縮につながります。テストステロン(男性ホルモン)が低下し、エストロゲン(女性ホルモン)が相対的に増加化すると報告されています。
食生活もEDの危険因子の一つに挙げられています。
全粒穀物食品(精製されていない穀物:玄米や精製されていない小麦など)、豆類、野菜、果物の摂取はEDを減らします。逆に、赤身の肉、全乳脂肪製品、糖分を多く含む飲料や食品は、EDを増加させるとしています。西洋食から、いわゆる地中海食への変更が良いとされます。和食も良いと思われます。
運動習慣の有無とEDは、関連しているとされます。ただし、どのような運動がEDに改善的に働くかは、不明な点もあります。運動に伴って、ストレス等を解消することも、EDを改善させる理由かもしれません。
デスクワークの男性と、運動量の多い職場の男性と比較した場合、デスクワークの男性の方が、EDの割合が高かったとの報告もあります。
肥満は、最近では、単純に体重がオーバーしているのではなく、一つの疾患と捉えられるケースが増えています。メタボリック症候群(代謝症候群)が、その最たる例です。
肥満により、心血管疾患のリスクが増加することが指摘されています。同様に、EDの危険因子であることも指摘されています。
肥満の改善は、EDの改善につながります。
糖尿病は、強力なEDの危険因子であること知られています。動脈硬化や神経障害からEDを発症します。さらに、その前段階である、耐糖能障害(境界型糖尿病)の段階から、EDに影響しうることがわかっています。
糖尿病への移行を阻止することはもちろん、改善を心がけることが大切です。
動脈血管性EDと心血管疾患は、原因に共通点が多く、共に動脈硬化から生じます。まり、心血管疾患を有す男性は、EDにも罹患している可能性が高く、その逆も然りということになります。さらに、EDそれ自体が、心血管疾患のリスクファクターであることもわかっています。
下部尿路疾患LUTSは、EDの独立した危険因子であることが指摘されています。そのメカニズムは、現在のところ不詳です。
下部尿路疾患LUTSや前立腺肥大症を治療することが、EDの改善にもつながることがわかっています。
うつ病や不安神経症など、様々な精神疾患は、EDと関連しています。また、その治療薬の抗うつ薬や安定剤の類は、薬剤性EDを誘発する可能性が高く、注意が必要です。
タイプDパーソナリティーの男性はEDが多いとされています。
タイプDパーソナリティーとは
否定的な感情や考えを抱きやすい傾向と、他者からの否定や非難を恐れる傾向を併せ持つ気質)(否定的な感情や考えを抱きやすい傾向と、他者からの否定や非難を恐れる傾向を併せ持つ気質)
パートナーに対して、何らかの不満があったり、パートナーとの関係性がEDに影響を与えることは言うまでもないかもしれませんが、カップルの1人のメンバーの性的機能不全はパートナーに影響を及ぼすことが指摘されています。
さらに、パートナーに対する性的関心が減少していること自体が、心血管疾患の独立した危険因子であることがわかっています。
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心因性EDは、器質性EDと比較し、一般診療で原因として軽視されがちですが、非常に重要です。若年者のED例だけでなく、幅広い年代で、考慮が必要とされます。
最近のトルコからの報告では、器質性EDが43%、心因性EDが47%、混合性EDが19%としています。
40歳未満ED例の85.2%が心因性EDであり、40歳以上例においても、40.7%が心因性EDであったとの報告もあります。
EDは、様々な原因が複雑に絡み合って発症いたします。単純に、『心因性EDである』、『器質性EDである』と断言できない場合も多く、その両方が原因である場合も多々あります。上記の報告が極端な例であったとしても、一般的には、主たる原因として心因性EDが40%程度占めるとされています。
参照:
(1)Multicentral clinical evaluation of the aetiology of erectile dysfunction: A survey report
International Urology and Nephrology 32(4):699-703
(2)The etiology of erectile dysfunction and contributing factors in different age groups in Turkey.
Int J Urol. 2004;11(7):525-9.
また、心因性EDは、交感神経媒介性EDとも言われます。
自律神経には、交感神経と副交感神経があります。
交感神経は、緊張したり、ストレスがかかったり、不安感があると活性化します。この交感神経は、勃起を抑制し、また射精を早めます(早漏の原因にもなります)。交感神経の伝達物質の一つであるノルアドレナリンが、勃起に抑制的に働くとされています。つまり、交感神経の過緊張はEDの原因となります。ノルアドレナリンは、その性格から、ストレスホルモンと言われることもあります。
副交感神経は、交感神経とは逆に、リラックス時に優位となります。副交感神経は、勃起を促します。リラックスすることが勃起には大切です。
様々な”ストレス”は、交感神経の緊張をもたらすため、EDに繋がります。平たく言うと、『気が休まっていない』ことが原因です。不安、ストレス、抑うつは、代表的な心因性EDの原因となります。
また、その治療薬である、抗神経症薬、抗うつ薬、抗不安薬は、薬剤性EDの原因薬剤としても知られています。
いわゆるZ世代と呼ばれる若年者層は、デジタルネイティブやソーシャルネットワークネイティブとも呼ばれ、インターネットから様々な情報を得ているとされます。
ポルノもその一つです。
10代の頃よりポルノを長時間閲覧することが、EDに繋がるとする報告があります。インターネットにて容易にポルノを閲覧できるようになったことと、若年者のED例の増加時期が一致するため、これが原因と考えられています。
海外では、『Porn-Induced ED(ポルノに誘発性されたED:ポルノ誘発性ED)』というというワードがあるほどです。日本でも、同様の傾向がある可能性を示唆しているとも言えます。
ポルノ誘発性EDについては、別項で解説しています。ご参考下さい。
池袋スカイクリニック
心因性EDは、比較的、急速に発症するケースが多く、なんらかの“きっかけ”が判明することもあります。
この“きっかけ”は、様々で、枚挙にいとまがありません。
例えば、
など、様々な“きっかけ”を発見することができます。
心因性EDの場合は、メンタル的な問題が変動することで、勃起機能も変動します。
例えば、
など、が挙げられます。
これらが解決するとEDも解決します。
これに対し、器質性EDの場合、例えばですが、原因となる病気が改善しなければ、EDも改善しません。
心因性EDは、様々な心因により発症します。それが改善すると、EDも改善しますが、再度、心因が生じるとEDが再発します。現代社会は、ストレス社会とも言われております。複数のストレスを抱えている方が大勢います。その一つ一つが心因性EDの原因になる可能性があります。
睡眠中に生じる夜間勃起現象は、レム睡眠中の無意識下で生じます。無意識であるが故に、様々な心因から解放されているとも言えます。
器質性ED例は、夜間勃起現象が減少していることが知られており、夜間勃起現象が認められれば、器質的に問題はないといことになります(肉体的に問題がな無い)。
睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に現れます。脳を休めるのがノンレム睡眠期であり、レム睡眠期は夢を見ているタイミングとされています。
”朝勃ち”は、”夜間勃起現象の名残”になります。夜間勃起現象と朝立ちは、完全なイコールでは無いため、朝勃ちがなくとも、心配する必要はありません。
睡眠の前半はノンレム睡眠が多く、後半になるにつれて、レム睡眠が増加します。睡眠時間が不足している方は、ノンレム睡眠期が割合的に多いため、夜間勃起現象も少なくなる場合があります。
夜間勃起現象の生じるメカニズムの詳細はわかっていません。
心因性EDは器質的に異常が無いため、その心因さえとり除ければ、健常者と変わりありません。つまり、心因さえとり除ければED治療薬が著効します。ポイントは、心因をいかに取り除くかになります。
性欲が消失している場合は、ED治療薬による治療も難しいのですが、性欲があれば、ED治療薬は多くの場合、有効です。ED治療薬により得られた十分な勃起は、性行為への集中を増し、それが性欲増加、さらには、性行為への没頭につながります。
心因によりもよりますが、成功体験が治療につながるケースがあります。ED治療薬を使用することで、途中で萎えてしまうなど、勃起に関する不安は著減します。性行為に集中し、十分なパフォーマンスが発揮できれば、それが自信に繋がります。特に、パフォーマンス不安を原因とする例には有効です。
かつては、”バイアグラ トレーニング”と呼ばれることもありました。
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不安と最も思い浮かべやすいのは、パフォーマンス不安(予期不安)と呼ばれるものだと思います。
など、ご自身のセックスのパフォーマンスに自信が無いことが原因となります。
また、これは、
など、パフォーマンス不安の根底に存在する場合もあります。
セックスに対しての不安感が、性行為への集中を阻害し、それが性欲亢進を阻害し、勃起を抑制します。このような場合は、自分のペースでできるマスターベーションは、問題ないことが殆どです。ED治療薬を使用し、成功体験を積み重ねることが、治療につながります。
恐怖感とも言える不安です。陰毛が生い茂り、湿潤である外観に対する恐怖感や、膣口の収縮など動きに対する恐怖を感じる例があります。これは、病的と捉えられる場合もあります。
うつ病例は、何事に対しても興味を持つことが難しい場合があります。性行為も然りであり、性欲減退につながり、EDに繋がります。
また、うつ病例は、他者とのコミュニケーションを避ける傾向もあり、パートナーとのコミュニケーションも減少します。性的なコミュニケーションも同様に減少する傾向があります。
一概にストレスといっても、多種多様な事柄が、ストレスの原因となります。仕事の多忙さや対人関係、家族内の問題や健康問題なども、これにあたります。このストレスが、”不安”や”抑うつ”につながる場合もあります。
また、”気持ちの余裕の無さ”が、EDに繋がります。精神的な緊張は、交感神経の緊張をもたらします。精神的な問題の体症状として、EDが出現します。
ここで挙げるのは、
など、単純な問題ではありません。精神的葛藤とも呼べる問題です。
『パートナーに、様々な怒りや不満を抱いている』、しかし、『それを伝えることができない、伝えることが、逆に罪の意識を感じる』など、複雑な対立した感情です。
このような複雑な対立した深層心理とも言える感情が、EDを誘発します。
海外では、Anxiety(不安)に分類される場合もあります。
自己評価の低い方は、自分自身に自信を持つことができず、さらには、自分自身に否定的に考える傾向があります。このことが、性欲の減退や、性行為への期待感の低下につながり、EDの原因となり得ます。
日本では、文化的に、”性”にまつわる事柄をタブー視する風潮があります。タブー視することが、『性=悪いこと』と捉えられることにもつながりかねません。その考え方が、性欲の抑制につながり、EDを引き起こします。
同様に、宗教的な理由で、”性”が抑制される場合があります。
他者の暴力などによって、性行為に従事させられた場合や、性犯罪に関わった例など。
いじめなどで、大勢の目の前でペニスを露出させられた、マスターベーションを強要されたなども、心因性EDの原因となります。
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陰茎や、勃起に関わる臓器や組織の異常によって生じるEDを、器質性EDと呼びます。
例えば、動脈硬化による血管内皮障害や神経疾患による神経障害などの、物理的障害を原因とするEDとなります。
原因となる器質的な異常の発症と共にEDも発症するため、心因性EDと比較し、緩徐に発症するケースが多くなります。例えば、年齢が原因であれば、加齢と共にEDが徐々に発症します。
器質性EDの原因が、進行性の病気であった場合、その病気の進行により、EDも増悪します。パーキンソン病などの神経疾患が原因であった場合、パーキンソン病の進行と共にEDも増悪します。
心因性EDは、環境などの因子が、その心因に影響を及ぼします。例えば、自宅でないと落ち着いて性行為が出来ないと言った場合です。
器質性EDの場合は、この様な変動は乏しいです。自宅でも、ホテルでも、EDの程度に著名な変化は生じません。
器質性EDの場合は、夜間勃起現象が少なくなることが知られています。夜間勃起現象の名残である朝勃ちも、当然ながら、減少します。
心因性EDの項でも取り上げていますが、夜間勃起現象は、レム睡眠中に生じます。レム睡眠時に目が覚めた場合は、夜間勃起現象が朝勃ちという形で残ります。ノンレム睡眠時に覚醒した場合、朝勃ちは認められないことが多いです。
そのため、
朝勃ちが乏しい=器質性ED
と即断する必要はございません。
これは、重力の影響で、血液が下部に貯留しやすいからです。通常であれば、静脈には逆流防止弁が付いているため、体位による逆流の差は、大きく生じません。静脈の漏出(短絡)がある場合は、逆流防止機構が働きません。勃起はペニスの充血であるため、静脈の漏出(短絡)がある場合は、より充血しやすい体位を取ることで、勃起が容易になります。
池袋スカイクリニック
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中枢神経疾患や末梢神経疾患は、EDの原因となります。
視覚や聴覚、嗅覚刺激や、感触などの末梢からの性的刺激を脳が処理し、ペニスを勃起させる命令が発せられます。発せられた命令は、脊髄を通り勃起中枢である仙髄(S2〜S4)にいたります。そこから、骨盤神経(副交感神経)を介して、陰茎(末梢)に伝えられます。
この経路の、どの部位に障害があろうとも、EDを発症しえます。
さらに、障害部位によっては、ペニスの萎縮を招きます。
など
仙骨にある勃起中枢(仙髄S2〜S4)より上位の部位の障害(脳や上位脊髄(特に胸髄T10より上)の場合、ペニス自体の変化は少ないです。
しかし、勃起中枢や末梢の骨盤内腔神経の障害の場合は、脱神経の影響で、ペニスの萎縮が生じます。脱神経(神経障害)は、陰茎の血管平滑筋や内皮細胞のアポトーシス(細胞死)を生じ、線維化を進行させます。これが陰茎の萎縮につながる可能性があります。
加えて、線維化の進行は、陰茎海綿体などからの血液の漏出につながり、陰茎の怒張を妨げます(EDの原因となります)。
勃起中枢である仙髄(S2〜S4)より上位の障害(特に胸髄T10より上)は、勃起中枢のコントロールを失うことになります。
そのため、性的刺激やそれ以外の刺激を陰茎が受けた場合、突然の勃起、意に反した勃起や射精につながることがあります。
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器質性EDの中でも、最大の原因は血管障害とされます。
血管障害は、『動脈性』と『静脈性』に分類されます。
陰茎の動脈硬化が、最大の原因疾患です。心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などと原因が同じです。これらの疾患がある場合はEDを、EDがある場合は、これらの疾患を疑い、検索する必要があるとも言えます。
高血圧や脂質異常症、糖尿病が、このEDの危険因子とされています。ED発症リスクは、2〜3倍との試算もあります。喫煙も同様です。
血管平滑筋や血管内皮細胞の障害による、動脈の弾性の低下が原因となります。
各々の疾患に付いての説明を、別項で行っているので、ご参考下さい。
下のリンクから進んで下さい。
代表疾患はペイロニー病(またはペロニー病:Peyronie’s disease)です。別名、陰茎硬化症と言います。ペイロニー病は、原因不明の炎症により、ペニスの湾曲が強くなり、膣への挿入困難や、勃起時の疼痛を生じる疾患です。炎症が陰茎の血管に及ぶと、瘢痕化、線維化が進行します。陰茎海綿体の線維化の進行により弾性が低下すると、血液充満によって生じる、白膜下静脈(流出静脈)の圧迫不全が生じ、陰茎海綿体圧が上昇しません(勃起しません)。すなわち、勃起硬度の不足、EDになります。
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骨盤内腔の手術が代表的です。
例えば、前立腺がんに対する神経温存術式が、神経の走行は、千差万別であり、単一の術式で、カバーできるものではありません。また、術中の副陰部動脈の障害も、EDを誘発するとされています。こちらもまた、神経の走行と同様に、その走行は個人個人で異なります。肉眼で確認できないところもあり、難しいところもあります。
同様に、骨盤骨折も、神経や血管障害から、EDの原因になります。
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など
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『ホルモン異常によるED』は、一般的には器質性EDに分類されます。
ここでは、わかりやすいように別に取り上げています。
男性ホルモン、主にテストステロンは、男性生殖器の成長に欠くことの出来ないホルモンです。
思春期に分泌が加速し、二次性徴を促します。
日本性機能学会のED診療ガイドライン第3版では、
テストステロン低下を伴ったED患者へのテストステロン補充療法を実施することを強く推奨する
としています。しかし、EDに対しての効果については、未だ、議論されているところもあります。
EDの発症と増悪と、年齢によるテストステロンレベルの低下は、必ずしも、因果関係を意味しているものでは無いとする意見もあります。
テストステロン補充療法と性機能に関する研究報告は古くからあります。
例えば、テストステロンを補充することで、性的な空想に対する勃起反応が向上するとする報告や、勃起機能に関しては、他の臓器が必要とするテストステロン濃度より、遥かに低いレベルで十分だとする報告、テストステロン濃度が低いと考えられる高齢男性の中にも、正常な勃起機能を持つ例がいるなど、様々な研究報告があります。
さらには、テストステロン補充療法は、性欲、射精、性行為への効果は、治療開始から2〜3週間以内で発現するのに対し、勃起機能への効果は最大6〜12か月要するとする報告もあります。
また、動脈硬化を有する高齢男性に対しテストステロン補充療法を行った結果、18〜36ヶ月後に実施した、問診票IIEFスコアによる性機能を評価では、差が出なかったとする報告もあります。
低テストステロンであることの判断基準にも、新たな提唱があります。
テストステロンレベルは、個人差が大きく、また、変動もします。
もともと、テストステロンが正常〜高いと考えられている男性が、例えば、年齢的にテストステロン値が低下したとします。この場合は、テストステロン補充療法が有効かもしれません。
逆に、もともと、テストステロン値が低いと考えられていても、正常な性機能と思われていた例では、テストステロン補充療法の効果は、乏しいのかもしれません。
どこかのタイミングでテストステロンを測定し、ご本人の基準値を得ておくことが必要なのかもしれません。
参照:
Subclinical male hypogonadism
Best Practice & Research Clinical Endocrinology & Metabolism
Volume 26, Issue 4, August 2012, Pages 539-550
日本泌尿器科学会が監修しているLOH 症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引きでは、診断基準として『血清(総)テストステロン値が 250ng/dL 以下』または『血清フリーテストステロン値が 7.5pg/mL』を挙げています。
テストステロン補充療法は、症状を有していれば、テストステロン値にこだわらないとしています。
注:アンドロゲン受容体遺伝子にある CAG リピートが情報伝達の効率に関係するため、テストステロン値だけでは判断が出来ないためとしています。
テストステロン補充療法は、未だ、不明な点も多くあります。副作用も同様です。効果がないと判断するのであれば、漫然と継続することは控えて下さい。
テストステロン補充療法に伴い、心血管系疾患のリスクが改善するとする報告もあれば、増加するとする報告もあります。
米国臨床内分泌学会、米国内分泌学会、欧州泌尿器科学会、国際性機能学会、国際Aging male 学会では心血管系のリスクの増加はないとしています。
その一方で、米国泌尿器科学会では判断は困難としています。
また、英国性機能学会では、リスク増加および低減の両方の可能性があるという立場をとっています。
その他にも、前立腺への影響、多血症、睡眠時時無呼吸症候群、造精機能障害などの、懸念があります。
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甲状腺機能低下症および甲状腺機能亢進症のいずれも、EDの原因となることが知られています。しかし、そのED発症メカニズムは不明です。
甲状腺機能亢進症で、症状としてEDが全面に出ることは多くありません。
甲状腺機能低下症の場合、様々な症状が全面に出る可能性があります。一見、不定愁訴と捉えられがちな場合もあります。なんとなく元気が出ないため、軽度の抑うつと診断されることもあります。血液検査で、コレステロール値が若干高いだけ、若干の肝機能性を認めるだけの場合もあります。この様な例であっても、治療により、以前より体調が上向く場合があります。EDが積極的に唯一自覚できる症状の場合もあります。
甲状腺疾患は、日本人に含めアジア人に多い疾患です。ED治療薬の効果が乏しい場合、スクリーニングとして、検査することも良いと考えます。
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EDの疫学調査は世界各国で行われていますその中でも、1980年代後半に報告された”Massachusetts Male Aging Study”は、最も有名なものの一つです。
この報告では、40歳から70歳の男性の『52%』にEDが認められるとしています。その内訳ですが、40歳では、軽度、中等度、重度EDが、16.5%、17.5%、4.9%であったのが、70歳では、18%、34%、15%と、加齢とともにEDの有病率と重症度が増すことも示されています。
加齢とEDの関係は直感的に理解できますが、その詳細は複雑です。
参照:
Impotence and its medical and psychosocial correlates: results of the Massachusetts Male Aging Study
J Urol. 1994 Jan;151(1):54-61.
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ED治療薬とは、erectile dysfunction(ED)の治療薬を指します。
勃起不全治療薬ということになりますが、最近では、勃起不全という呼び方自体が使われなくなってきております。『EDとは』の項で説明いたしましたが、軽症から重症まである様々な程度の勃起機能障害を反映していないからです。
ED治療薬は、単にED薬、勃起薬と呼ばれることもあります。
PDE5(phosphodiesterase type5)とは、cyclicGMP(cGMP)の特異的に阻害する薬剤になります。PDE5阻害剤の勃起改善作用を知るには、勃起のメカニズムを理解する必要があります。ただ、専門的な内容になるので、一般の方は理解する必要はありません。
本邦で認可されているED治療薬は、薬剤名で言うと、バイアグラ、レビトラ、シアリスとなります。成分名で言うと、順に、シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィルとなります。
世界的にも、この3剤がED治療薬の中心となっております。3大ED治療薬とも言えます。いずれもジェネリックが認可されており、認可時期が異なることによるシェアの変動がありましたが、ややシアリス(タダラフィル)のシェアが拡大していましたが、大きくは、世界ではシェアは3等分されていました。
レビトラの製造元であるバイエル薬品は、ジェネリック認可後に、先発品レビトラの製造を中止(撤退)しており、現在は、ジェネリックであるバルデナフィルのみ流通しています。
短時間型ED治療薬である『バイアグラ(シルデナフィル)』と『レビトラ(バルデナフィル)』、長時間型ED治療薬である『シアリス(タダラフィル)』、各々の特徴に合わせて、使い分けていただければと思います。
バイアグラは2014年、レビトラ、シアリスは、2020年に国際特許が消失しており、各ジェネリック医薬品が市販されています。
ジェネリック医薬品は、
「成分名」+「製薬会社名」
で記載する決まりがあります。「製薬会社名」は、その製薬会社がわかるようなアルファベットであるときもあります。
そのため、その名称は、
シルデナフィルにはViagraのジェネリックである『VI』、タダラフィルではCiarisのジェネリックであることを示す『CI』が付与されています。これは、ED治療薬以外にも他の疾患の治療薬としても、同成分の薬剤が認可されているためです。それを区別する意味で、先発薬の頭文字が付与されています。
例えば(あくまでも『例えば』です)、池袋スカイクリニックがシルデナフィルの製造販売を行っていたとすると、シルデナフィル「スカイ」 または シルデナフィル「SKY」となります。
この名称における規則は、配合剤などが市販されない限り絶対です。つまり、これに従わない場合は、非正規品になります。日本語で、薬品名「製薬会社名」の記載がないものは非正規品です。
注:池袋スカイクリニックでは、ジェネリック医薬品の製造は行っておりません。
池袋スカイクリニック開院当初は、現在に比べると、まだまだED治療薬が一般的ではなく、間違った認識をお持ちの方も多数いらっしゃいました。
その最たるものが、『ED治療薬を服用すると、意に反して、ずっと勃ちっぱなしになってしまう』とういものでした。
これは間違った認識です。今でこそ、この様な間違ったイメージをお持ちの方は少なくなりましたが、ゼロではありません。ED治療薬は、あくまでも、性欲が高まった時にのみ、勃起改善効果を発揮します。つまり、性欲が高まらなければ勃起を得ることができないため、性欲を高める工夫が必要です。
イメージとしては、ブレーキを取り除く薬剤とお考え下さい。ブレーキを離しただけでは車は簡単には動きません。車を動かすにはアクセルが必要です。ペニスを勃起させるには、何らかのアクセル(性的刺激)が必要になります。
感情に作用する薬ではないので、性欲の増加(催淫作用)は期待できません。
結論から言うと、『女性に対しては、ED治療薬の効果は期待できない』になります。
いずれのED治療薬も、単純にペニスの勃起を改善するものです。いわゆる媚薬のような効果は期待できません。ED治療薬が感情に作用する薬剤では無いためです。
女性にも男性のペニスに相当する器官とし、クリトリス(陰核)があります。クリトリスもペニス同様、朝勃ちしますし、ED治療薬によって勃起する可能性もあります。また、クリトリスが勃起することで、感度の増加を期待する方もいらっしゃいますが、これも恐らく当てはまりません。逆に、感度の低下に繋がる恐れもあります。
いずれのED治療薬も女性への適応はございません。薬剤の女性への譲渡、服薬の強要は止めて下さい。
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その他にも、アバナフィルavanafil、ウデナフィルudenafil、ミロデナフィルmirodenafilなどの薬剤もございますが、ローカルドラッグであり、世界的に流通しているわけではありません。
アバナフィルavanafilは第二世代のED治療薬として期待されましたが、結局のところ、基本的な性格が3大ED治療薬と変わらず、取って代わる存在になっていません。
ウデナフィルudenafil、ミロデナフィルmirodenafilは、その勃起改善効果や評価も、上記3大ED治療薬に及ばないため、あえて使用する必要は無いと考えられています。
現存するED治療薬は、全てPDE5(phosphodiesterase type5)阻害剤に分類される薬剤となります。
アバナフィル avanafil は、2012年に米国で認可された4番目のED治療薬で、即効性と副作用の少なさ、食事の影響の少なさが特徴とされています。
レビトラ(バルデナフィル)に似たプロフィールを持つ薬剤です。
世界的には流通していません。
アバナフィル avanafil は、第二世代のED治療薬として期待されていましたが、アメリカでのシェアは4位に留まっています。
韓国発のED治療薬(Zydena ザイデナ®)です。
ウデナフィル udenafil は、やや持続時間の長い、短時間型ED治療薬といった薬剤です。
日本にも、世界的にも流通していません。
ミロデナフィル mirodenafil は、服薬後1.25時間で最高血中濃度に達し、半減期は2.5時間とされています。
ミロデナフィルは、シルデナフィルよりもゆっくり効き、やや持続が長いイメージです。
即効性があるわけでもなく、タダラフィルのように長時間持続するわけでもなく、やや中途半端なED治療薬です。
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開院時間
月曜日〜土曜日:10〜20時(祝日を除く)
日曜・祝日:10〜16時
注:祝日であっても、日程により、20時まで開院している場合があります。
(詳しくは”お知らせ”を確認して下さい)
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東京都豊島区西池袋1-14-3
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